音楽講座リポート

教育学部創立130周年記念事業

「教室コンサート」の実施について(報告)

 長崎大学教育学部では、芸術と社会との接点を広げ、個性豊かな文化環境づくりに貢献することを目的とし、「地域への文化発信プロジェクト」を平成15年に学部内に立ち上げました。その間学部学生と教員が協力して、地域の文化ホール、美術館、公民館、病院等で総合的で広範囲な文化活動を行ってきました。

 教育学部は,平成17年をもって創立130周年を迎えましたが、これを契機に、様々な記念事業を行ってまいりました。地域への文化発信プロジェクトでも、海外の学術協定校との国際交流及び地域への学部開放・学生の教育活動の一環として、次の4事業を実施いたしました。

1 韓国漢陽大学との「日韓交流音楽会」
2 県内の小中学校に出かけての「教室コンサート」
3 大学キャンパス内の学生プラザにおける「ランチタイムコンサート」
4 長崎県美術館でのロビーコンサート「イブニング・ライブ」の実施

 中でも、教室コンサートは長崎県教育委員会のご協力を得て、県内の小中学校に呼びかけたところ、13校からコンサート実施の申し込みがあり、地域的なバランス等も考慮し6校を訪問し、コンサート及びワークショップで大きな成果を上げることができました。アンケート結果からも分かるように、児童・生徒は音楽に対して、高い関心を持っています。発表の場を持つというのは、大学生にとっても教育的効果が大きく、今回の教室コンサートの実施は、大変有意義であったと考えられます。8月19日から11月10日にかけて実施した教室コンサート&ワークショップの概要をご報告いたします。

《演奏者編成で留意した点》
* できる限り弦楽器、管楽器、声楽それにピアノをバランスよく配置し、演奏チームを編成する。
* 教員と学生が必ず演奏メンバーに加わるようにし、更に全コンサートに堀内が実施責任者として参加し、コンサートのスムーズな運営にも配慮する。
* 実施校からの要望に答え、金管バンド、ブラスバンド、コーラス等のワークショップも適宜入れる。

《曲目構成で留意した点》
* 楽器紹介をかねて、各楽器の特徴が分かるような曲を入れる。
* 子どもたちがよく知っていて、気楽に楽しめる曲を入れることにより、1時間のコンサートが飽きてしまわないように工夫をする。
* 事前にアレンジをした校歌を、出演者全員でアンサンブル伴奏する。
* より多くの生徒が参加できるプログラムを入れる(リズム遊び、コーラス等)
* 季節感のある曲を入れる(8月→夏の曲〜10・11月→秋の曲)
* 教科書に登場する曲、クラシックの名曲、アニメの曲、テレビ等でのヒット曲などをおりまぜてプログラムを組む。(クラシックの押し付けはしない)

高島分校ドラム
高島分校金管指導
対馬教室コンサート
日宇全体

《アンケート結果から》
以下は、アンケートに見る子どもたちの率直な感想、及びそれに対するコメント(→で記す)です。

*楽器との出会い
・ファゴットという楽器を初めて見ました。すごく大きかったのでびっくりしました。(佐須中1年生)
・ヴァイオリンは、音が小さくなったり大きくなったりして迫力があってすごかったです。(日宇小5年生)
・ フルートは、音色がとても自然な感じで、心が和みました。(有喜小6年生)
・見たことのない楽器ばかりだった。(豆酘中1年生)
・からだが楽器ですごかった。(有喜小1年生)
  →バリトンの独唱を聞いての感想です。マイクなしで声が大きかったなどの感想もありました。
 
*音楽面で
・ラピュタとハウルの曲が似ているなということを発見した。(有喜小4年生)
→確かに、メロディーライン及び、ハーモニーが似ています。鋭い指摘です。
・人生のメリーゴーランドは音の重なりがとてもきれいでした。(日宇小6年生)
  →アンサンブル曲で、メロディー以外の音の動きを聞き取ったのでしょう。
・豪華な作りだけれど、音は昔のような音だと思いました。(佐須中2年生)
  →クラリネットの音色を、見事にたとえています。

* コンサート全体について

・ 対馬全部の人たちに聴いてほしいくらいだった。(佐須中3年生)
→今回対馬では、地域一般方にも呼びかけました。
・心がウキウキするコンサートだった。(有喜小6年生)
・ 音楽にのることができたような気がする。(有喜小6年生)
→リズム遊びは、生徒たちに人気でした。
・私はもっともっと今までより音楽が好きになりました。(日宇小5年生)
・ 心の中まで聴こえたような気がした。(佐須中3年生)
→美しい音楽は、理屈なしで生徒たちの心に届きます。
・ ピアノの手が魔法の指に変身していた。(佐須中3年生)
→演奏者にとっては、たまらなくうれしい感動的なコメントです。
・アレンジされていて良い感じの曲だと思う。かっこよかった。(豆酘中2年生)
  →アンサンブル伴奏で、校歌をいっしょに歌っての感想です。

《その後の音楽科大学生の反応》

*演奏会前に夜中まで、自主的に練習をする学生の姿が目に付くようになった。
*自分達でアンサンブルの工夫をしようという姿勢が見られるようになった。
*自発的に選曲、編曲を行うようになった。
もっと多くの学校を訪問して、このようなコンサートを行いたいという学生が、増えてきた。子どもたちが聞いてくれる喜びを、肌で感じ取りそれが音楽を勉強するエネルギーになっている。

《今後の展望》
 大学の授業との関連や、移動に要する経費の面から制約はあるものの、小中学校に出かけて行き、教室コンサートを実施する意義は、大変大きいと考えられます。今年は、教育学部創立130周年事業の一環として、その経費で実施できましたが、各小中学校単位で、年間行事の中で音楽鑑賞を組み込むことは、予算化が難しい面もあるでしょう。
しかし、大学が小中学校と連携し今回のような音楽鑑賞会を開くことは、東京などからアーティストを招いて行う通常のスクールコンサートより、かなり少ない予算で実施可能です。ちなみに今回6会場で実施しましたが、佐世保高島分校での旅費、対馬でのコンサートの宿泊・旅費を含めても、謝金等が必要なかったため、総経費は約30万円で実施できました。
離島だけでなく、生の音楽に触れる機会は都市部の小中学校でも決して多くはありません。知っていれば、うちも申し込んだのにという現場の先生方からの声もありました。申し込みをいただきながら、伺えなかった小中学校もあります。地域への文化発信プロジェクトでは、これからもあらゆる場面を捉え地域社会に向け、情報発信を行い、地域文化のために貢献していきたいと考えています。関係諸機関の皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。

プリント用PDFファイル

[ RETURN ]